本格的なマスタリングのやり方【基礎編】

マスタリングをやってみたいけど、手順がわからない。

マスタリングに使うプラグインが知りたい。

そんな、悩みにお答えします。

本記事の内容

  • マスタリングのやり方・考え方
  • マスタリングにおすすめのプラグイン

この記事を書いている私は、ミックス歴5年ほど

下記のツイッターモーメントから私がミックスしている曲が聴けます。

音源を仕上げる上で、マスタリングはとても重要な工程です。

マスタリングを正しく行えれば、あなたの音源を聴く人の満足度は上がることでしょう。

今回はそんな「マスタリング」のやり方、その基礎編を解説します。

1、マスタリングの手順・考え方

マスタリングの目的は「どんな環境で聞いても、作り手の意図通りに聞こえるようにする」ことです。

音圧を上げることはその副産物でしかないことを良く覚えておいてください。

本来の目的を見失うと、単にチープで自己中心的なサウンドを生み出してしまう危険があります。

ミキシングやマスタリングのための思考法についてはまた別の記事で解説する予定です。

1-1準備

ミックスした音源を書き出しましょう。

慣れないうちはミックスとマスタリングは完全に別の工程として行いましょう。

そうすることで視野が狭くなったマインドをリセットできます。

マインドリセットを行うことで、リラックスした状態、観客の視点でマスタリングを行うことができるでしょう。

具体的に書き出すときは、

  • 良い音質で書き出す(24bit 48kHzなど)
  • 音量は下げ目で(最大音量が-5dbくらい)

書き出したら、新規プロジェクト(25bit-48kHzのもの)を作成して、音源を読み込みましょう。

1-2マスターEQ

まずはEQを使いましょう。

今回は「マスタリングの基礎」ということもあり、一番失敗の可能性が低い手順で解説します。

EQより後にコンプレッサーを使うことで、「とりこぼし」をコンプレッサーが回収してくれます。

では、具体的にEQのかけかたをみていきましょう。

EQをかける時は、他の記事でも解説している通り「削る」が基本です。

今回はマスタリングの基礎ということで「音が滞留しているところを削る」というやり方をしましょう。

はじめにチェックして削っていくべき帯域が以下になります。

※重要度順に◎→◯→△で示しています。

  • ◯90Hz
  • ◎138Hz
  • △330Hz
  • ◯500Hz
  • △1,000Hz
  • ◎2,000Hz
  • ◯3,300Hz
  • △5,600Hz
  • ◯7,300Hz
  • △10,000Hz〜

ちょっと多いですが、まずは◎と○あたりから手をつけていけば良いと思います。

優先度の高いものを中心に解説します。

まず、138Hz…この138Hz前後の部分はとにかく最優先で削るべきと思います。

「ずいぶんピンポイントだな」と思われた方もいるかもしれません。

この帯域は、

  • ローエンド(ベースやバスドラムなど)の倍音が溜まる
  • ギター、ピアノなどの和音楽器の最低音が溜まる
  • 人間の耳に滞留感を与えやすい
  • スピーカーで鳴らしたとき部屋を鳴らしやすい

等々、とにかく音圧を上げるという行為と相性が悪い帯域になります。

次に2,000Hz付近ですが、ここは音を軽く、チープにしてしまう帯域です。

フレチャーズマンソン曲線(この原理については超上級になるので解説は省く)というのがあり、この帯域は理論的に音をショボくさせる帯域であると同時に、何となくここを上げると音が大きくなったような錯覚を起こす、かなり危険な帯域です。

音圧のマヤカシに囚われず、心を鬼にして削りましょう。

ミックスが上手くなれば、この帯域に音を滞留させず、音を大きく聞かせることができるようになります。

今回は基礎編なので、◎部分のみの解説にとどめますが、提示した帯域を削ることでどのような変化が音源に起きるかを感じてみましょう。

1-3マスターコンプ・マスターディエッサー

マスターコンプはスローアタック・ファストリリースでかけるのが良いです。

つまり、アタックは遅く、リリースは早くということですね。

レシオに関しても1.5以下が望ましいでしょう。

この設定にする目的は2つあります。

  1. 音の抜けを良くする
  2. リズムに統一感を出す

です。

まずは以下の画像をご覧ください。

アタックは40msでかけてますね。

なぜ40msなのかというと、

人間の聴覚上認識できる音声は約20ms〜とされています。

その理論に基づいて少し余裕を持たせたアタック部分40msを残し、それ以降の音の伸びを削ることで、ダラっとしたサウンドをスッキリかつパンチのある音で聴かせることが出来ます。

リリースについては、曲のテンポが速ければ早く、遅ければ遅く

というようにかけることで、作者の意図したリズム感で音源を聴かせることに役立ちます。

続いて、ディエッサーについてですが、こちらは必要に応じてマスターにも使用すると良いでしょう。

判断はリミッターをかけた後の方がしやすいと思いますが、かけるのはコンプレッサー→ディエッサー→リミッターの順になります。

1-4リミッター

リミッターをかけるときにRMSを見るのは辞めましょう。

RMSはあくまで第三者(音源を使用する者、動画サイト、テレビ局など)が音量を調整するための判断材料とするために用いられる数値です。

よくリミッターやメーターにRMSを見る機能が搭載されているのは、プロが特定のプラットフォームに最適化する際使えるようにするためです。

さて、具体的なリミッターの掛け方ですが、

それは軽く音を平らにする程度です。

画像をご覧ください。

この例の通り、薄くかけるくらいで十分です。

この画像程度のリダクション(かかり具合)で満足のいく音量に到達しない場合は、ミックスを見直しましょう。

1-5ディザー(書き出しについて)

さて、書き出しは基本的に以下の2種類になります。

  • 音源用(CDなど)
  • →16bit-44.1kHz WAV

  • 動画用(DVD、YouTubeなど)
  • →16bit-48kHz WAV

割と知られていないですが、動画用と音源用では、書き出す音質が違います。

これはもともと、CDの音質規格とDVDの音質規格から上記のものが標準になっただけなので、この形式でなければエラーが起こるというものではありません。

ただ、多くの動画ソフトがこの形式をデフォルトにしているので、よりクオリティを求める際はこのパターンで書き出すと良いでしょう。

また、24bitでマスタリングしている場合は16bitで書き出す際に、マスタリングしていた時の音と書き出された音源の音の差異を埋める為にディザーをかけましょう。

参考画像で使用している、WAVES製のL2リミッターにはディザーが搭載されているので、16bitに設定して書き出すと良いでしょう。

2、マスタリングにおすすめのプラグイン

さて1章で解説した工程をスムーズにこなすのにおすすめのプラグインを紹介します。

2-1EQ

今回は、マスタリング向きということで、最低10バンド以上という趣旨で紹介しています。

バンド数が多い割に軽い

最大26バンドに加え、アナライザーがとんでもなく優秀

1-2コンプレッサー

マスタリング用のコンプレッサーは、ミックス・マスタリングを行った人の個性が反映されやすい行程です。

ですので、今回は私が普段、主に使用しているものを紹介しています。

パンチ・抜けを作るには最適、MIXノブが付いていて、調整がしやすい。

また、リリースがBPMシンクできるので、マスターコンプとして扱いやすい。

クセがあって初めは扱いづらいかもしれないが、暖かみのあるサウンドを作るにはもってこい

1-3リミッター・ディザー

リミッターについては、定番であること、音が歪みにくいこと、チープなサウンドを避けられることを目的に選んでいます。

ここで紹介しているものを使えば、マスタリング歴の浅い方でも安定したサウンドを作ることが可能かと思います。

定番中の定番。マキシマイズのチューニングもよく、最も扱いやすいと言っても過言で無い。

非常にフラットなかかり方をするため、仕上がりが思い通りになる。

はい、今回の解説は以上になります。

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

お疲れ様でした。

あなたのミックスライフが良いものになりますように。

うにお